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国宝に真贋論争

 20080605019jd_2 国宝常長像、真贋いかに 学界巻き込み論争

仙台市博物館が所蔵する国宝の肖像画「支倉常長像」をめぐり、真贋(しんがん)論争が起きている。青森中央学院大(青森市)の大泉光一教授(日欧交渉史)が「博物館の現存画は模写」と偽物説を打ち出し、博物館の浜田直嗣前館長が「現存画が本物なのは史実的に明らか」と反論。学界を巻き込んだ議論に発展している。

 大泉氏は、現存画は本物が1900年前後に東京美術学校(現東京芸大)に預けられた際、同校出身の画家黒田清輝、北連蔵、児島虎次郎のいずれかによって模写され、本物と入れ替わったと20080605020jd_2 する仮説を唱える。
  本物は処分され、現存する史料では、明治政府の指令で慶長遣欧使節を調べた平井希昌の著「欧南遣使考」(1876年)に載っている別の模写が、時代考証で正しく、本物を忠実に再現していると考察する。

 大泉氏は、この模写で常長の顔がやつれていることに着目。本物は常長が渡欧中に描写されたとされることから、「当時、常長は長旅で体調を崩していた。本物もやつれた顔で描かれたとみられ、模写の信頼性を高める」と論じる。
 現存画はその点、顔が端正に描かれ、不自然だと主張。「欧化を進める明治政府と、戊辰戦争の敗北から立ち直るために英雄を祭り上げたい仙台藩の意を受け、画家が顔を意図的に整えて模写した」と推論している。

 大泉氏は著書で持論を展開し、2006年度に和辻哲郎文化賞を受けた。新説を加えた新著を今月に出す。国際日本文化研究センター(京都市)の山折哲雄前所長も「多くの史料を読み込み、通説を打破した」と評価している。

 一方、浜田氏は今年3月発行の博物館の研究報告書で反論した。欧南遣使考の模写で常長の顔がやつれていることについて、「模写が上手でなく、正確に描写できなかった」とみる。明治中期―昭和初期に本物を撮影したとされる写真を系統的に並べ、「どれも現存画と同様に整った顔をしていて、現存画が本物である裏付けになっている」と指摘。「大泉氏の説は憶測から抜け出ていない」と結論づけている。

 東大の五野井隆史名誉教授(キリシタン史)は「現存画は一部修復されたが、大規模な改作があったとは考えられない」と本物説を支持する。
 文化庁は「真贋論争が起きていることは聞いているが、国宝指定を見直す議論に発展しているとは考えていない」と話している。

[支倉常長像] 縦80.8センチ、横64.5センチ。常長が慶長遣欧使節の一員として渡欧中の1615年ごろにスペインかイタリアのローマで描かれ、日本人を描写した最古の油彩画とされる。常長は20年に画を持って帰国したが、禁教令によって仙台藩に没収された。明治以降、所有権が宮城県から伊達家に移るなどし、1964年に仙台市が買い取った。2001年、他の慶長遣欧使節関連資料とともに国宝に指定された。

河北新報2008年06月06日金曜日

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